オープンソース AI の勢力図は、2026 年に入っても再編が止まりません。OSS Insight が公開している AI トレンドランキングから、6 月時点の TOP10 を整理すると、ローカル推論系・LLM ツール系・コーディングエージェント系の三つ巴が見えてきます。本稿では各リポジトリの現状とハイライトを概観します。
TOP10 一覧(2026-06-02 時点)

| 順位 | リポジトリ | スター数 | 28日成長 | カテゴリ |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Significant-Gravitas/AutoGPT | 175,276 | +69 | AI Agents |
| 2 | ollama/ollama | 147,755 | +183 | Inference |
| 3 | langchain-ai/langchain | 116,658 | +183 | AI Agents |
| 4 | langgenius/dify | 111,408 | +275 | LLM Tools |
| 5 | open-webui/open-webui | 105,918 | +323 | Inference |
| 6 | ggml-org/llama.cpp | 90,420 | +456 | Inference |
| 7 | nomic-ai/gpt4all | 73,243 | +13 | Inference |
| 8 | zed-industries/zed | 68,623 | +216 | Coding Agents |
| 9 | infiniflow/ragflow | 61,428 | +149 | RAG |
| 10 | All-Hands-AI/OpenHands | 60,548 | +196 | Coding Agents |
AutoGPT が「歴史的スター」で 1 位を維持しつつ、直近 28 日で見ると llama.cpp(+456)、open-webui(+323)、dify(+275)が高成長率組 という構図です。
ollama 0.30:Apple Silicon と最新OSSモデルへの対応強化
ollama/ollama は最新版 0.30 で、llama.cpp ベースの互換性・パフォーマンス改善に加え、Apple Silicon 向けの MLX エンジン拡張、NVIDIA ハードウェアでの高速化、Hugging Face GGUF モデルおよび自前ファインチューニング済みモデルの取り込み強化を実施しました。
加えて、/api/show レスポンスがキャッシュされるようになり、中央値レイテンシは約 6.7 倍改善。VS Code 等の統合ツールの起動が体感で目に見えて速くなっています。
サポートモデルの面では、Kimi-K2.5、GLM-5、MiniMax、DeepSeek、gpt-oss、Qwen、Gemma などの主要 OSS LLM をフルカバー。Mac 上では Gemma 4 MTP speculative decoding も入りました。
langchain と langchain-ollama 1.1.0
langchain-ai/langchain はスター 11.7 万、フォーク 2.25 万に到達。OpenAI(GPT 系)、Google(Gemini)、Anthropic(Claude)、Ollama、AWS Bedrock 等への接続がほぼワンライナーで完結する「LLM 統合の標準ライブラリ」化が一段進みました。
連携パッケージ langchain-ollama は 2026-04-07 に v1.1.0 をリリース。ローカル LLM を LangChain のオーケストレーション機構と組み合わせる構成が安定し、「完全ローカル動作・無料の自前エージェント」を組むハードルが大きく下がっています。
注目株:dify・open-webui・ragflow
ランキング下位に隠れた「成長率組」も実は重要です。
langgenius/dify(11.1万★・+275)
ノーコード/ローコードで LLM アプリを構築できるプラットフォーム。RAG・エージェント・チャットボット を統合 UI で組める柔軟性が評価され、エンタープライズ採用が伸びています。中国発 OSS の中ではグローバル展開でトップクラス。
open-webui/open-webui(10.5万★・+323)
ローカル LLM 向けのチャット UI。ollama と組み合わせて「自宅 ChatGPT」を立てる用途 で爆発的に普及中。プラグイン、RBAC、Web 検索統合など、企業内利用にも耐える機能が揃ってきました。
infiniflow/ragflow(6.1万★・+149)
RAG(Retrieval-Augmented Generation)専門のオープンソース。深いレイアウト解析・引用付き回答 が強みで、社内ナレッジ検索・法務 QA など「正確性が要る RAG」の選択肢として支持を集めています。
コーディングエージェント勢
zed-industries/zed(6.8万★)、All-Hands-AI/OpenHands(6.0万★)の急伸も見逃せません。Anthropic の claude-code、xAI の Grok Build と並んで、「AI エージェント駆動エディタ/CLI」 が一大カテゴリに成長中。今後の re-ranking はこのカテゴリの動向次第で大きく動きそうです。
個人開発者目線:3つの実用ヒント
- 完全ローカル推論を試したいなら ollama 0.30 + open-webui の組み合わせが鉄板
- LLM アプリの試作は dify で UI を切り、必要に応じて langchain で深掘りする 2 段構え
- 社内文書 QA / RAG プロトタイプは ragflow で「引用付き応答」を最初から作り込む
ベンダー API への依存度を下げつつ、自前運用に切り戻しやすい OSS スタック を 1 つ持っておくことは、価格変動リスクの大きい 2026 年の AI 業界では特に重要な備えになります。
なぜ OSS AI がここまで伸びるのか

トレンドの背景には次の3つの構造変化があります。
- ローカルハードウェアの底上げ: Apple Silicon の M5 / M6 世代や、コンシューマ NVIDIA GPU の VRAM 拡大により、個人のマシンで実用的な LLM が動く ようになった
- オープンウェイトモデルの追い上げ: Llama / Qwen / Mistral 系が GPT-4 級に肉薄し、「タダで Claude / GPT 並み」が現実に
- クラウド API のコスト懸念: スタートアップが OpenAI / Anthropic に月数十万円を払う構図への警戒感から、ハイブリッド構成(OSS + クラウド)が標準になりつつある
「クラウド API 一本足から、OSS + API のハイブリッドへ」 ——これが 2026 年後半の AI スタック設計の主潮流です。GitHub Trending TOP10 は、その変化のリアルタイムインデックスとして読むと示唆深いリストになっています。

